前作「スパニッシュ・アパートメント」から数年。アラサー世代になった主人公グザヴィエとその仲間たちのその後が描かれています。
「スパニッシュ・アパートメント」の時よりもグザヴィエはじめ他の登場人物の内面にフォーカスした作品になっていること、舞台がフランス、イギリス、ロシアというまたまた異なる国々になっていることなどから、前作とは違った良さを感じました。
目次
映画「ロシアン・ドールズとは」とは?
タイトル
ロシアン・ドールズ
原題
Les Poupées russes
監督
セドリック・クラピッシュ
キャスト
ロマン・デュリス
ケリー・ライリー
オドレイ・トトゥ
セシル・ドゥ・フランス
ストーリー
25歳のあのときから、君の人生はどうなってる?
20代のスペインでの出会いから5年、ヨーロッパの若者たちの恋、仕事、そして人生を描いた物語。 出典:Amazon | ロシアン・ドールズ スパニッシュ・アパートメント2 [DVD] -映画
仕事、恋愛、アラサー世代の悩み
「スパニッシュ・アパートメント」から5年。グザヴィエは30歳に。
日本では30歳というとどこか一つの大きな通過点のような捉え方をされていますが、これはやはり他の国でも同じことなのかもしれません。
同じようにアラサー世代を今まさに生きているぼくとしては、この映画で何度も描かれるグザヴィエの苛立ちがやっぱり分かる。
25歳から30歳まで5年間という期日が過ぎても、自分自身の描いていた30歳とは全くかけ離れている。
どちらかというと恋愛の比重が多いですが、仕事や仲間との関係も共感できる部分があるのかと思うので、アラサー世代には特におすすめできる映画だと思います。
小説家の自分語り
PCに向かってひたすら文字を打ち込む彼の姿ではじまる本作では、彼の自分語りと共にこの5年間の出来事が語られていきます。
前作のラストでは、安定な生活が保障された公務員の仕事を1日で捨てて、小説家としての一歩を踏み出したグザヴィエが描かれていますが、5年後の彼は小説家としての成功を夢見ながらも、生活費を稼ぐためにテレビドラマの脚本も請け負う生活をしています。
ぼくは小説家が主人公の映画がとても好きですが、それはおそらく自分が小さい頃から文章で人を元気にしたり、感動させたり、びっくりさせたりできる人に憧れていたからなのかなと。
こんな風にブログを書き始めたのも、やはり文章を綴らないことには満足できないという自己顕示欲を無視できなくなってしまったのだと思います。
そういうことで小説家グザヴィエの自分語りに最初のシーンから引き込まれることになります。
モテ男のグザヴィエは真実の愛を見つけられるのか?
前作にも増してグザヴィエはモテます。もうありえないくらいにモテます。
多くの女性と共に時を過ごしますが、真実の愛が一向に見つからない。そこで、レズビアンの友人に恋愛の悩みを相談する場面があります。
すると、彼はこんな言葉をぶつけられてしまいます。
「おとぎ話の主人公のようなこと言ってるんじゃないよ、あんたが求めてる女性なんて存在しないんだよ」
こんなことを言われて彼は今まで以上に落ち込んでしまうのですが、まさにぼく自身にズバッと言われてしまっているようでちょっと笑えませんでした。
人生に答えがないのと同じように恋愛にも答えなんてない。だから、全くわからない女性の心を知るために多くの女性と過ごしてみるというのは理に適っているかのようですが、そんなことはないわけで。
グザヴィエを見ているとどこか自分の姿を見ているようで、ぼくの悩みはさらに深くなったかもしれません。
本作では最終的にハッピーエンドを匂わせる終わり方をしていますが、実は本作から約10年後のシリーズ最終作ではまた悩むグザヴィエに出会うことができます。
今回はフランス、イギリス、ロシアが舞台
本作の舞台はフランス、イギリス、ロシア。またまた国を跨いで撮影が行われており、しかもその完成度はとても高く海外好きの感情をこれでもかと昂めてくれます。
少しの期間フランスとイギリスでの二重生活を送るグザヴィエ、電車で行ったり来たりのカットにはどこかこころ躍ってしまいました。
そして、ロシアのサンクトペトルブルクの街並みに癒されます。最近ロシアという国がマイブームになりつつあるぼくとしては、このロシアという国を舞台のひとつとして選んでいることもこの映画の個人的な評価を押し上げている一因になっています。
真実の愛を見つけたウィリアム
愛がテーマとなっている本作のキーマンは何と言ってもウィリアム。
バルセロナで共同生活をしていたウェンディの弟のウィリアムは、前作ではただの空気の読めないキチガイ野郎でした。そんなウィリアムがグザヴィエに言うのです。
「愛を見つけたよ、真実の愛だよ」
仕事場にて言葉も通じないロシア人女性に恋をした彼は、なんと1年もの期間を費やしてロシア語を習得し、そして1年後にロシア語で愛を伝えるのです。
なんだこのピュアすぎるストーリーは?
だって、あのウィリアムですよ。前作を観た人ならば間違いなくびっくりします。
前作では、異なる国々の人が共に暮らしているにもかかわらず、スペイン人がスペイン語を話すのをバカにしたり、ドイツ人にヒトラートークを仕掛けたり、もうおバカの限りを尽くしたキャラクターの彼でした。
そんな彼が本作ではまさに愛の伝道師として登場します。
結婚式の後のパーティーで酔いつぶれた彼は、泣きながらグザヴィエに言います。
「幸せだよ、幸せなんだよ」
愛に迷い、愛に苛立つグザヴィエは彼を介抱しながらも、自分自身の愛の捉え方に対してどこか引け目のようなものを感じてしまいます。
ハッピーエンド?最終作でその答えが分かります
「くそ、愛ってなんだよ」とキレまくっていたグザヴィエですが、今回のラストはハッピーエンドを醸し出すものになっています。
何だか消化不良なものになっておりますが(ハッピーエンドの描き方も中途半端)、これもシリーズ3部作の最終作を見越しての描き方だったのかもしれません。
すでに全シリーズ制覇したぼくからすれば、「スパニッシュ・アパートメント」「ロシアン・ドールズ」をすでに観ている人は必ず最終作「ニューヨークの巴里夫」を見るべきと声を大にして言いたいです。
「ニューヨークの巴里夫」ではすべてがつながった完璧な収まり方をしているので、ぜひグザヴィエの生き様を見届けてほしいと思います。
悩む男グザヴィエはやはり最後まで人生や愛に悩み続けるわけですが、最後の最後は美しい形でのハッピーエンドを迎えることになるので、すっきりした気持ちで彼の幸せを祝福することができます。
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