キャンディーにもチリソースをふりかける国、それがメキシコだ

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ぼくは辛いものが苦手である。

最近のブームなのかよく分からないが、日本では辛いものが流行っている気がする。カレー専門店に行った場合、中辛よりも上のレベルが4つ、5つ用意されていることだって珍しくはない。そんな時、「超」と「極」という言葉が雑に使用されていると思うのはぼくだけではないはずであろう。

ここメキシコにおいては、もはや一時的なブームなんてものではなく慢性的にスパイシーフードが好まれている。

もし世界でスパイシー選手権やスパイシー杯なるものが開催されているとすれば、メキシコという国は間違いなく優勝か準優勝に輝くはずである。

ちなみに我が日本のお隣に位置する韓国について言えば、もちろんスパイシー界ではずば抜けた国家であるが、メキシコと韓国で嗜まれている料理や調味料の辛さはジャンルが全く異なる。

前者のメキシコでいえば、タコスやトルティーヤにこれでもかと赤か緑のソースをぶっかけてその上からレモンを搾りつけ、ガブリと素手で口の中に放り込む。もしここで郷に入れば郷に従えという昔からの言い伝えを守ってしまえば最後である。「うわ、辛い」という感覚のすぐ後に、ビビビと口の節々に痛みを伴う。

お店には色とりどりのスパイスが用意されている

一方、韓国はこうだ。キムチやケチュジャンくらいのワードしか思いつかないほどに韓国料理には精通していないことを前提で聞いてもらえればありがたいところであるが、イメージとしてはスープを飲んだりした時のあのじわじわと熱く身体中に染み込んでくる辛さがある。

全くもって感覚の説明というものは難しい。とにかく、この2カ国の戦うフィールドは同じスパイシーであるにも関わらず微妙に異なる。陸上種目で言えば、3000m障害と10000m走くらいの違いはあるのではないだろうか。

さて、このようにメキシコという国では辛いものが好まれる。いや愛されている。何を食べるにしても何とかして「スパイス」を効かせたいという願望を無意識下に身体が求める。もはや「辛くない料理を身体に取り入れるならば私は何も食べないことを選択する」とでも言ってきそうなくらいだ。(ちなみにそんな発言を聞いたことは一度もない)

タコス屋でもチリソースはほんの少しだけ

ぼくはメキシコ人と共同生活をしていたこともあって、ほぼ毎日タコスを食べていたし、それこそ地元の人がよく行く屋台やタコス屋に足繁く通っていた。

コカコーラが宣伝された真っ赤なテーブルと椅子が外に並べられたタコス屋。80円/個のタコスを4、5個とコカコーラを注文する。これがメキシカンスタンダード。

タコス屋でのコカ・コーラの机、椅子には見慣れたものである

そんな時に辛いものが苦手なぼくはいつも彼らに小馬鹿にされる。まずもってぼくははじめのうちフォークでタコスを食べていた。食べ終わった後にべっとりとした油が指にこれでもかと残るのが嫌だったし、それを拭き取るナプキンやティッシュを探すのも面倒だったからである。

「なんでフォークで食べてるんだよ。そんな奴今まで見たことないぞ」
「フォークで食べるんならお箸にしなさいよ、日本人なんだから。ハハハ」

その後でソースをペロリとほんの少しだけ口にするのがタコス屋でのルーティーンである。本当にほんのちょびっとだけ。

すると、また彼らはぼくを小馬鹿にする。

「日本人はみんなお子ちゃまなのか?俺のちっこい妹でもチリソースを目一杯つけてタコスを食べるのに」

メキシコで暮らした数ヶ月間にこのやりとりを何度繰り返したことであろうか。これからメキシコを訪問する日本人が無条件のうちに「辛いのは苦手なんでしょ?」と尋ねられたとしたら、その原因を作ったのはもしかしたらぼくかもしれない。「日本人がみんな辛いもの嫌いなわけじゃないよ」としっかりと反論しておいてもらえれば幸いである。

こんな風にちょこっといじられることは海外ではよくあることである。そして、いじられることもなかなか悪くないとも感じてしまう。その時ばかりは注目されているわけで、スポットライトの中心に無条件で立つことができるからだ。

「外国人」というブランド力を駆使しても海外で人々の注目を集めることは意外に簡単なことではない。ぼくが滞在していたモンテレイという街は日本人自体はそこまで多くないわけだけれど、そんな地にあって訳もわからんアジア人に熱視線を送ってくれる人は少ない。

またロサンゼルスやニューヨークなど世界でも在留邦人がトップ3に入る都市では、逆にありきたりすぎるという理由からもっと注目度は下がるであろう。

ただし、たまにいじられすぎると少し疲れたりもする。

それは女の子集団からの口撃である。女の子たちから一斉に「チリソース少ししか付けてないのに。そんなに辛いの?ウケるー」と言われると、多少なりとも反応に困ってしまう。

ぼくはそもそもそんな風に言われて「だよねー、てへ」という返しで場を和ませる癒し系男子でもないし、かと言ってそんな雰囲気に一方的に嫌な気分を感じているわけでもない。ただなんとなくちょこっと強張った笑顔になってしまうので、そんな時は言葉を発することはやめておくことにする。

この時の気持ちを精査してみると、まさに同じようなシチュエーションが頭に浮かんでくる。

場所はディズニーランド。
「乗り物苦手だから乗れないんだよね」
「えー、このジェットコースター小さい子供でも乗れるのにー。ホントに乗り物嫌いなんだねー、ハハハ」

うん、この時の感覚。まさにスパイシーフードと遊園地のジェットコースターはぼくにとっての鬼門なのだ。小さい子供でも簡単にくぐり抜けられるにも関わらず、ぼくにとっては人生の一大事にすら発展するかもしれないわけである。

ここまで読んで、「え、メキシコのチリソースってそんなに辛いの?」と一抹の不安を抱いた人がいるかどうかは分かりかねるが、これについては心配ご無用であろう。単純に辛いものが苦手な人間から見た場合の世界と、辛いもの大好きな人間の側の世界との間には決して超えられない大きな溝がある。

全くもって心配することはない。メキシコで時間を過ごしたほとんどの日本人は「メキシコ料理は最高だった」と言うはずである。

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キャンディーにもチリソース!?

ただし一方で、メキシコが過剰なまでのスパイシー大国であるということを意識させられたのも事実だ。今までキャンディーというものは、甘ったるい風味を舌で転がすことで脳神経に美味しさを伝えるものであると思っていた。

しかし、メキシコでは甘さと辛さのコラボレーションによって、両極端の感覚を一遍に楽しみたい人が多い。正直なところこれには驚いた。

常識として「甘いもの」はその甘さこそに吸い寄せられた人が欲しいと思うものであり、「辛いもの」は少しばかりの衝撃を舌に与えて半ば痛めつけながらも快感を得るためのものであろう。(この定義付けは全くもってぼくなりの解釈なので異論反論いつでも受け付けている)

そんな中、メキシコのスーパーマーケットで山積みになっているキャンディーはその両者のために存在していた。「常識」「非常識」という言葉で物事を判断することは最も嫌悪することであるとはいえ、この甘辛キャンディーは日本人的感覚からすれば異論の余地なく「非常識」な代物であろう。

もうここまで辛さを追求されるとお手上げである。

辛いのが嫌いなぼくは白旗を振って

「参りました。Spicy is the best!!」

と辛党な人たちに向けての賛辞を送る以外には選択がない。それだけ彼らの辛さへの飽くなき探究心はずば抜けている。

メキシコという国に来る前は、メキシコ人のイメージは「タコス」や「マフィア」や「麻薬」くらいのものだった。(本当にメキシコ人の皆さん申し訳ない。でも大多数の日本人はなんだかんだこんな感じだよね?)

それが今ではメキシコ=スパイシーフードが大好きな国になった。
こんな言葉で締めくくろうと考えていたけれど、スパイシーフードだけではなくスパイシードリンクにも最後に言及しておくことにする。

そして、このスパイシードリンクについてだけは、辛いものが苦手なぼくが唯一素晴らしいと感じたものだった。

メキシコで飲んだマルガリータは最高だった

メキシコはテキーラで有名な国というのは誰もが知っていることであろう。そんな国でマルガリータ(テキーラをベースにしたお洒落なカクテル)を注文すると、お店によってはグラスの縁に塩に加えてチリ(唐辛子)がこれでもかと付いている時がある。

比較的アルコール度数の強いお酒であり、生ビールのようにゴクゴクと飲むなんてありえないので、ゆっくりとフレーバーを味わう。そして、一口飲むたびに下唇に付着する赤いチリを唇を閉じた状態で舌でペロリとする。

テキーラとチリの相性が良いからなのか、強めのアルコールがぼくの脳に対して「辛いのもOK」という情報伝達を行うことに成功しているのか定かではない。どちらにせよ、ぼくはこのチリが塗されたマルガリータが大好きで、メキシコにいる時は何度も注文していた。

ちなみに日本ではマルガリータ自体がメニューにないお店がほとんどで(特にチェーン店の居酒屋はほぼない)、作ってくれるところでもやはり本場メキシコのマルガリータには遠く及ばない。

そういうわけで、日本国内でチリが塗されたマルガリータを美味しく頂けるお店があれば是非是非行ってみたいと思ったりしている。

辛いものが苦手なぼくにとってはメキシコの食生活はそこまでウェルカムなものではなかったけれど、このマルガリータだけはぼくのそんなスパイシー虚弱体質を讃えてくれたようである。

そんなプラス面を強調させてもらったところで今回のスパイシートークを終わらせてもらうことにする。

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